
ゆれる(2006年/日本)
監督:西川美和
原作:西川 三和 『ゆれる』
出演:オダギリジョー、香川照之、伊武雅刀、新井浩文
真木よう子、木村祐一、ピエール瀧
大いにゆれた。あいまいな記憶の中で、有罪と無罪との間で、兄と弟の間で。
有罪か無罪かってところで意見が分かれそうだけど、やっぱり無罪なのかなぁって思ってる。弟の心理状態によって変わる事件のシチュエーションに惑わされがちだけど、意識するしないは別として実は弟の方は最初から兄の無罪を疑っていたんじゃないかなぁというのが率直な感想。そう思う根拠は多々あるけれど、疑心暗鬼の末に兄の有罪を確信してしまうという二度目の面会のエピソードを見るとやはり心から無罪を信じているとは思えないんだよね。
一方兄の方はというと、直接手を下したわけではないけれど、自分があの場にいたことで“結果的に”彼女を死なせてしまったのだから有罪であると考えている。弟の偽善者ぶりも結構なものだけれど、それ以上に兄の聖人君子じみた偽善者ぶりにはムカムカさせられた。表面上は別として結局は兄弟どちらともお互いに心を許しあっていなかったわけで、そういう意味ではラストで和解したように見える二人のその後が見てみたいと思った。
作品自体の印象としては“多面性”って言葉がぴったりだと思う。登場人物の多面性、事件の多面性。見る人と角度によって様々に変化する様子が上手く描かれていると思った。さらに見る者をザワザワと落ち着かない気分にさせる雰囲気といいグラグラと定まらない出演者達の心理状態といい、いいとこ突いてるなぁって思う。
それだけに残念だったのが裁判風景。全体的に締まらないというかだらしないというか、なんとも中途半端な感じがしてもったいなかったです。特にキム兄の恐ろしいほど素人臭い演技はどうにかならなかったんだろうか、と思わずにはいられなかったですね(それが狙いだとしたら恐ろしいけれど)。
個人的には兄役の香川照彦の演技が時々行き過ぎててヤバめだったのが印象的。あと、冒頭車中で弟と被害者との間で交わされる会話。あの雰囲気であの台詞は反則だと思うよ。
是非原作も読んでみたい!
→ゆれる 公式サイト
→AMAZON ゆれる
→eiga.com ゆれる
→allcinema ゆれる