2010/08/13

『桜桃の味』

桜桃の味」 ★★★★☆
Ta'm e guilass (1998年/イラン)
監督:アッバス・キアロスタミ
出演:ホマユン・エルシャディ、アブドルホセイン・バゲリ

激しくネタバレです。未見の方はご注意ください。

多額の報酬と引き換えに、自殺の手助けをしてくれる人を探して彷徨う中年男性の物語。第50回カンヌ国際映画祭でのパルム・ドール受賞作品。初のイラン映画ってことでかなり興味津々で鑑賞してみたのですが、予想を激しく上回るラストに度肝を抜かれました(苦笑)。いや、正確にはラストのその先、といった方がいいかな。どちらにしても、常識を覆す展開に驚き、そしてその解釈に悩みました(そのあたりの感想はまた後ほど)。

印象的だったのは、イランという土地が作り出すその雰囲気。男が声をかけるのはクルド人やトルコ人など年齢も人種も様々。土埃の舞う道路や掘削現場、どこまでも続く土色の世界。生きることの厳しさを感じるその風景のなか、出会うほとんどの人がお金に困っているにも拘わらず、誰も彼の願いを聞いてはくれないところ。そして誰ひとりとして欲深い人が出てこないところがとても印象的でした(日本なら真っ先に金額を聞いてきそうだと思った)。そしてこの作品に描かれているイランという国が、普段メディアから受ける「イラン」という国のイメージとあまりリンクしなかったのも印象に残ってます。なんかもっと殺伐とした国なのかと思っていたので、そこに暮らす人々が思いのほか普通(というか人間的というか。当たり前なんだけど、なんでかな)なのが不思議に感じました。

そして肝心のラストについて。決定的なシーンが全くないのでどちらともとれるとは思うのですが、私個人としてはやはり男は死を選んだんだろうな、と思います。やっと引き受けてくれた初老の男性に対し興味を掻き立てられ、そのせいで一瞬決意が揺らいではみたものの、男性が死というフィルタを通してしか世の中を見られなくなってしまった以上、そして死を前提にしてしか生きられなくなってしまった以上、遅かれ早かれ死を選ぶ運命にあったのだと思います。そして、ラストのその先にあったあの映像は、死というフィルタを除いてみれば、世界はこんなに穏やかで暖かく、優しさに満ちたものである。どのフィルタを通して世界を見るかは、あなた次第なのだ、ということを伝えたかったのではないでしょうか。

死については色々と思いを巡らすことはありますが、同時に生きるということに対しても同じくらいの真剣さで向き合う必要があるのではないかと改めて考えさせられた作品でした。

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posted by クマ at 10:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ★★★☆☆



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