真夜中のマルホランド・ドライブで起きた交通事故。一命は取り留めたものの一切の記憶を失った女は、たまたま女が忍び込みんだアパートの借り主の女とともに自分の過去を調べ始めるが…。『ツイン・ピークス』でお馴染みのデビッド・リンチ監督作品。リンチ作品ではお馴染みの混乱系深読みミステリー作品です。あちこちに巧妙に仕掛けられた伏線といい、何通りにも解釈可能な複雑で難解なストーリーといい、デビッド・リンチファンにはたまらない内容です。ちなみにこの作品、もともとはTVシリーズ用に企画されたらしいのですが、そのあまりにも過激な内容にTV局に却下されてしまったという逸話付きの作品だそうで。鬼才と呼ばれるに相応しい超難解で癖になる、そんな作品でした。この先の作品レビューはネタバレに付、未見の方はご注意下さいネ。
【以下ネタバレに付き、反転してお読み下さいませ】
作品中盤までは混乱することも無くスムーズに流れていきます。ナオミ・ワッツ演じるベティがやけに親切なのが多少気になりますが、田舎から出てきたばかりという状況を考えればお人よしなのも頷けるかと。そんな普通のサスペンスの様相が一転、二人が「シレンシオ」に出向いたあたりから混迷を極めていくわけですが、実際はなんてことは無い『夢オチ』若しくは『妄想オチ』ってヤツでした。とは言ってもそんじょそこらの『夢オチ』とは違って、結論に到達するにはなかなか苦労しましたけど。
この作品を見るうえで重要なポイントは作品前半と後半で時間軸と登場人物が入れ替わっているところかと。ココさえ押さえておけばまず間違いなく理解できると思います。解りやすい時間軸からいうと、前半と後半とを逆転させることで正しい時間の流れになります。時系列に簡単にまとめるとこんな感じ。カミーラ(リタ)とダイアン(ベティ)破局→カミーラ(リタ)映画監督と婚約発表→ダイアン カウボーイにカミーラ殺害を依頼→【ココで前半部分の夢を挿入】→ダイアン 青い鍵発見→罪悪感によりダイアン自殺。青い鍵を発見(つまりカミーラ死亡)したのとダイアンが夢を見るところはもしかしたら逆かもしれないけど、概ねこんな感じだと思います。もしかしたら前半部分の夢はダイアンが死ぬ間際に観たものっていうのもありかもしれませんね。
そして登場人物の入れ替わり。これはナオミ・ワッツ演じるベティが現実には腐乱死体で発見されたダイアン・セルウィンで、ローラ・エレナ・ハリング演じるリタは実際はカミーラ・ローズであるというところ。ベティとダイアンが性格、社会的立場、その他多くの事柄でまったく正反対であることからして、ベティはダイアンの願望を具現化したキャラクターではないかと思われます。カミーラを愛してやまないダイアンが、彼女に裏切られ殺害依頼してまでも、彼女との幸せを夢見ていたという風に考えると、とても切ないラブストーリーのようでもありますね。
とまあストーリーの謎は意外にアッサリ解けたんですが、逆に私を悩ませたのがストーリーとは一見無関係に思えるサブエピソードの数々。例えば作品冒頭のダンスシーンの意味やファミレスでのエピソード、青い箱の持つ意味(これはなんとなく想像がつくけど)や、電話、灰皿、その他もろもろ。これだけ謎が多いと躍起になって完全解読に挑む人たちが後を絶たないっていうのも理解できますね。私もきっと繰り返し何度も見てしまうんだろうなって思います。ラストに向けてのストーリーの崩壊っぷり、かなり癖になります。やっぱりリンチは凄い。
*****作品データ*****
マルホランド・ドライブ - MULHOLLAND DR.(2001年/アメリカ)
監督:デビッド・リンチ
出演:ナオミ・ワッツ、ローラ・エレナ・ハリング、アン・ミラー
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