2006/08/07

『カナリア』

母に連れられカルト教団「ニルヴァーナ」に入団した12歳の少年光一。その後教団はテロ事件を起こし崩壊、教団施設で育った光一と妹は一時児童相談所に預けられるが、妹だけが祖父母に引き取られることに。光一は妹を取り返そうと施設から脱走する…。

予想通りというかなんというか…。もともと気楽に鑑賞できる作品ではないとは思っていたのですが、この手の作品を見るとやっぱり憂鬱な気分になっちゃいますね。以前に観た『誰も知らない』の時もそうでしたが、こういった悲惨な状況に陥ってしまった子供達の姿を目にするたび一人の大人として申し訳ない気持ちでいっぱいになります。大人の身勝手さに怒りを感じると同時に自分の無力さを思い知らされますね。

一連の“オウム真理教事件”をモチーフに描かれた作品とのこと。地下鉄サリン事件が起きたのが1995年だから、あれから10年も経ったんですね。個人的にはなにも解決しないままただ時間だけが過ぎ去ってしまった、そんな印象です。この作品ではカルト教団内部の生活風景も描かれているのですが、その描写がなんとも痛々しい。親の都合でつれてきた子供たちが全く関心のない教義を学ばせられ、教祖を信奉するように教育される姿は可愛そうの一言に尽きるのですが、彼らを連れてきた親もまた、決して彼らを苦しめたくて連れて来たわけではないというところに遣り切れなさを感じます。どうしようもない人間の弱さ(大人も子供も)、そういったものをひしひしと感じる作品でした。

この作品で特に印象的だったのは子供二人が歩くシーン。身を守ってくれる大人もおらず、食べ物を買うお金さえ持たず、二人肩を寄せ合って街をさまよう姿には強く心揺さぶられます。片方は相手を攻め立て、もう片方は無言でドライバーを研ぐ、こういった二人の対照的な怒りの表現方法も印象に残りましたね。しかしどんなに強がっていてもどんなに生意気な口をきいてもどれだけスレていても結局は子供でしかなくて、大人の助けなしに生きていくにはこの世はあまりにも厳しく冷たいというのが現実なんだと思います。

そしてもう一つ感じたのは、いつの時代もどんな時でも子供にとって親は絶対の存在だということ。それが良い親でも悪い親でも。この辺は『誰も知らない』でも感じたことでもありますね。

とまぁストーリー的にはかなり感じる部分が多かったのは確かなのですが、難しいテーマを選んだだけに不満な点も多かったのも確かです。第一にいろいろなテーマを盛り込んでしまったせいか、コレといった力強いメッセージが伝わってこないところ。これって映画としては致命的だと思います。さらに演出面でもやけに丁寧な描写もあれば荒っぽい部分があったりとバランスの悪さを感じるところが多かったのもちょっと気になりました。あれもこれもとすこし欲張りすぎたかな?といった印象ですね。特にラストの光一の見た目の変化なんかなくても良かったんじゃないかって思いますし。それまでのドキュメンタリーっぽい雰囲気があのエピソードでぶち壊しって感じ。あれじゃ涙も引っ込んじゃいますよ(苦笑)
*****作品データ*****
カナリア - CANARY (2004年/日本)
監督:塩田明彦
出演:石田法嗣、谷村美月、西島秀俊、りょう、つぐみ、甲田益也子、水橋研二
公式サイト:http://www.shirous.com/canary/
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posted by クマ at 15:18 | Comment(0) | TrackBack(3) | ★★★☆☆



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