2006/08/22

『太陽』

1945年8月。地下の待避壕と唯一残った研究所で生活を送る昭和天皇。神と崇められてきた彼がマッカーサー総司令官との会談を経て「人間宣言」するまでの姿を描いた作品。

とても良い作品でした。今年見た作品の中でも一位二位を争うくらい。血が騒ぐっていうのかな?それこそ昭和天皇の一挙手一投足に目が奪われるといった感じ。監督が日本人じゃなくロシア人っていうところがちょっと悔しいけど、真摯な態度で日本人を描いてくれているところは正直嬉しかったです。作品としてはMSNのインタビュー記事で監督が語っているように、歴史映画というより御伽噺的な雰囲気の強い作品だったと思います。私のような歴史認識の甘い人間でも十分楽しめますが、より楽しむためには多少勉強していった方が良いかも(御前会議とかいまいちピンとこなかったし)。私も少し知識を仕入れてから、もう一度劇場に足を運ぶつもりです。

※この先多少ネタバレあり。ご注意下さい※

鑑賞前の印象ではもっと右っぽい内容の作品なのかな?と思ってましたが、思いのほかニュートラルな感じの作品で安心しました。シネパトスでは連日大入りで立ち見まで出ているらしいのですが、私が足を運んだ川崎チネチッタでは空席もちらほら見受けられる状態でした。といっても夏休み明け直後の月曜11:00〜の回でしたので、もしかしたら今頃は満席続きなのかもしれませんが。客層は休み明けの平日ということもあり、年配の方(それも女性)が多かったですね。中には中学生と思しきグループもいるにはいましたが、鑑賞後の雑談を耳にした限りではあまり心に響かなかったようです。ま、しかたないか。

印象に残るシーンは多々あるのですが、やはり一番印象的だったのは昭和天皇が何度も口にする「あ、そ」というセリフですね。その短いセリフは時になにやら不満げだったり、逆に愉快そうだったり、そしてある時は興味なさげだったりと言葉以上に饒舌に昭和天皇の心情を語ります。普通の人間として生きていくことも許されず、かといって神ではないことを自分が一番良く知っている、そんな彼が発する「あ、そ」という短い言葉には口に出すことさえ憚られる多くの言葉が含まれているんだろうなって思いましたね。

そしてもう一つ印象的だったのがマッカーサーとのディナーの席での葉巻のエピソード。この作品で描かれている昭和天皇は、とても無邪気で子供っぽい一面を持った人物として描かれているのですが、その無邪気さ、そして好奇心の強さが一番上手く描かれていたのがこのエピソードだったと思います。それまで英語で会話をしていたにも関わらず、目の前に現れた見慣れぬものに思わず日本語がこぼれてしまうあたり、とても微笑ましくて印象に残っています。

そして昭和天皇を演じたイッセー尾形について一言。昭和天皇を演じるなんて俳優としても日本人としてもかなり勇気のいる決断だっただろうと思います。「一つ間違えたら役者としても作品としても致命傷だよなぁ」って正直とても心配だったのですが、それも全くの杞憂でしたね。イッセー尾形の怪演ぶりは半端じゃないです。見るものの想像を超えた彼の演技は必見です。

そして一番驚いたのは鑑賞後の余韻がとても不思議だったこと。ちょっと言葉にするのが難しいんですが、なんとも言えない感情があとからじわりじわりと湧き上がってくる、そんな感じです。多分この余韻を味わうためにもう一回くらいは劇場に足を運ぶと思いますので、この辺のレビューはまたその時に。
*****作品データ*****
太陽 - The sun(2005年/ロシア・イタリア・フランス・スイス)
監督:アレクサンドル・ソクーロフ
出演:イッセー尾形、ロバート・ドーソン、佐野史郎、桃井かおり
公式サイト:http://taiyo-movie.com/
posted by クマ at 17:26 | Comment(0) | TrackBack(2) | ★★★★★



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