2006/09/28

『祇園噺子』

祇園で芸妓として生計を立てる美代春の元、母を亡くし行き場を失った栄子が訪れる。舞妓になりたいと言う栄子の熱意に負けた美代春は彼女一人前の舞妓に育て上げるが…。

本日の映画は『祇園噺子』。『雨月物語』、『赤線地帯』に続く溝口作品3作目にしてやっと来ましたよ。ストライク!な作品が。京都・祇園を舞台にベテラン芸妓美代春に降りかかる様々な出来事を描いた作品です。勝気で情に深い芸妓・美代春を演じるのは木暮実千代。先日観た『赤線地帯』では病弱な夫と子供のために娼婦として働くさえない主婦というかなり地味な役柄を演じてましたが、この作品での彼女はとんでもなく艶っぽくてまずそこからしてビックリ。物腰の柔らかさに加え京都弁のまったりとしたセリフ、その女性らしいしぐさに思わずクラクラ〜っときてしまいましたよ(笑)。

この映画の特筆すべき点はなんといっても人物描写の丁寧さ。見た目の華やかさとは裏腹に、金や権力に流される欲深くも身勝手な人間達の姿が冷静かつ緻密に描かれている点につきますね。特に説明があるわけではないんだけれど、なぜか登場する人物一人一人の思惑が手に取るようにわかるんですよね。話自体がシンプルだっていうのもあるんだろうけど、それでも人物描写が巧くないとココまで伝わらないですよね。ま、役者の演技力ってのも関係してきますけど。

みどころはなんといっても美代春の男顔負けの潔さ。契約欲しさに美代春をけしかけるオッサンも、そんなオッサンに接待されてるオッサンも、もうみんな涼しい顔して良くやるわって感じ(笑)。彼らのごたごたに巻き込まれた美代春も運が良いんだか悪いんだか。とはいえ、あの世界ではそんなことは大して珍しいことでもないだろうし、さらに美代春だってそういう汚い部分も百も承知であの世界にいるんだろうからどっちもどっちという感じがしなくもないけれど。ただ、そんな世界にいても健気に信念を貫き通してきた美代春が、栄子のために折れるっていうところに並々ならない潔さを感じるわけですよ。男のためでも金のためでもなく栄子のためにってところがね。この潔さ、女の私も惚れますね。

さらに美代春を締め出すお茶屋のお母さんがまた印象的。したたかなんだけど人情もあってとても頼りになるお母さんって感じ。でもうっかりしてると身包みはがされそうで怖いですけどね(笑)。どちらにしても抜群の存在感だったと思います。

あと、印象にのこっているのは言葉遣い。お店からの呼び出しに「解りました」でも「伺います」でもなく「寄せてもらいます」って答えるところが非常に印象に残ってます。そのほかにも美しい日本語(というか京都弁)がたくさんでてくるので、日頃言葉使いが荒い私としてはセリフを聞いているだけでもとても勉強になりました。これを機に言葉遣い、直してみようかしら(笑)。
*****作品データ*****
祇園噺子(1953年/日本)
監督:溝口健二
出演:木暮実千代、若尾文子、河津清三郎、進藤英太郎、菅井一郎、田中春男、小柴幹治、浪花千栄子
  →この作品をAMAZONで確認

この作品も、10/27に発売される『溝口健二 大映作品集Vol.1 1951-1954』というDVDボックスに収録される予定とのこと。同時収録されるのは「雨月物語」「お遊さま」「山椒大夫」「噂の女」。興味があってお金に余裕のある方は是非どうぞ!
posted by クマ at 17:06 | Comment(2) | TrackBack(1) | ★★★★☆



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この記事へのコメント
木暮実千代は「雪夫人絵図」も凄く色っぽくて良かったですよー。置屋のヘッドばあさんを演じた浪花千栄子さんも貫禄たっぷりで良かったですねー。そして若尾文子がとても可愛かった。彼女の京都弁の「へぇ」がすごくイイですー^^)。
Posted by ぶーすか at 2006年10月01日 21:30
ぶーすかさん
この作品に出てくる3人の女性は全員が凄く印象に残ってますね。それぞれに色っぽさがあるというか。今までの3本の中で一番好きです♪
『雪夫人絵図』、実はすごく気になってるんですよね〜。早く見たい〜!
Posted by クマ at 2006年10月05日 14:10
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