2005/06/08

それぞれが抱く少年時代の闇、それぞれが振りかざす正義 『ミスティック・リバー』

本日の映画:ミスティック・リバー 
住宅街の道路で遊ぶ3人の少年ジミーとショーンとデイヴ。そんな彼らのもとに近づいてきた警官を思わせる男にデイブは連れ去られ4日間の間監禁されてしまう。それから25年後に起きた殺人事件。被害者はジミーの娘ケイティ。この事件がきっかけで疎遠になっていた3人は被害者の父、担当刑事、容疑者というそれぞれ違う立場で再び出会い、それぞれの思いが交錯する、というストーリー。監督はクリント・イーストウッド。主演はショーン・ペン、ティム・ロビンス、ケヴィン・ベーコン。第76回アカデミー賞でショーン・ペンが主演男優賞をティム・ロビンスが助演男優賞をクリント・イーストウッドが監督賞を受賞した作品です。

まず第一に、豪華俳優陣の迫力のある演技に脱帽。ショーン・ペンのキレた演技に驚くと同時にティム・ロビンスの陰鬱とした演技に激しく居心地の悪さを感じます。今流行の作品に比べるとストーリー展開も緩やかだし、刺激的な映像も少ないのですが、全体的に鬱々とした雰囲気が立ち込める、そんな作品でした。そして評判どおり、鑑賞後にどうにもやり切れない後味の悪さを味わうことになった作品でもあります。

この作品全編を通して感じることは、人生はどこまでも不条理だ、ということ。中でも、トラウマから逃れられず結果的に報われない人生を歩まざるをえなかったデイヴはとてもいたたまれない存在。酷い、酷すぎる。一度掛け間違えたボタンを元に戻すということは並大抵のことではないということでしょうか。さらに後々明らかになるデイヴが犯した罪もそしてその後ジミーの犯す罪も、いきさつはどうであれ全ては正義の名のもと行われた行為であるにもかかわらず、その行為がもたらした結果は悲劇としか言いようのない哀しいいものでしかなかったし、過去を克服することが出来なかったデイヴも感情の暴走を止めることができなかったジミーもどちらも不幸としかいいようがない。あぁ、なんて映画なのかしら。後味悪すぎるー。

納得いかないけど仕方ないのかもね、と思いながらほとんどのエピソードは許せたのですが、唯一許せなかったは作品終盤ジミーの妻アナベスが落ち込むジミーに言ったセリフ。あえて内容は書きませぬがそのセリフの中に傲慢で独善的なアメリカ的思想を感じたのは絶対に私だけではないと思います。このシーン、もの凄くキライです。

*****作品データ*****
MYSTIC RIVER(2003年/アメリカ)
監督:クリント・イーストウッド
原作:デニス・ルヘイン
出演:ショーン・ペン、ティム・ロビンス、ケヴィン・ベーコン、ローレンス・フィッシュバーン、マーシャ・ゲイ・ハーデン、ローラ・リニー
公式サイト:http://www.warnerbros.jp/mysticriver/
posted by クマ at 15:15 | Comment(6) | TrackBack(4) | ★★★★☆



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この記事へのコメント
はじめまして〜。
随分は充実していますね。
横の「お取り置きリスト」に「トーチソングトリロジー」があったので立ち止まったのですが、書き込んでいる途中で「マルホランド・ドライブ」に変わっていました。そういうことなのですね(笑)。

ミステックリバーもみました。一度でもう見たくないといえる映画ですね。むごいからかな。三組の夫婦が出てくるけど、どの夫婦もちっとも幸せではないし。それに最後のセリフ、覚えていますよ。異様に感じたから記憶に残ったのね。
Posted by フルーツ at 2005年06月08日 15:29
フルーツさん、はじめまして。
おっしゃるとおり出てくる人物が誰も幸せそうじゃないっていう、ある意味特異な映画でした。
最後のセリフ、やっぱり異様ですよね。

右のお取り置きリストは、観たい(買いたい)DVDがあまりにも多すぎて収拾がつかなくなってきたので、他の作品に気をとられないようにと自戒の意味も込めて設置してます。今のところ15本くらいカナ?「トーチソングトリロジー」もその中の1本です。
Posted by クマ at 2005年06月08日 15:56
はじめまして。

ラストシーンも含めてアメリカではかなり評判が良かったようです。
大多数のアメリカ人はオイラのように「イヤミ」とは受け取らずに、そのまま「アメリカ称賛」という風に受け取ったんでしょうね。
なんともやり切れないのは、いずれにしても同じだと思うんですが。
いろいろ考えさせられました。
Posted by かおす at 2005年06月08日 17:07
かおすさん こんにちは。
ラストシーン含め、この作品のメッセージはまさに“アメリカ的”ですから、アメリカ人には受けるのは当然といえば当然、なのでしょうね。
中にはイラク戦争への比喩的メッセージが含まれていると解釈されている方も多いようですがその辺いかがですか?

どちらにしてもあまり後味の良い作品とはいえないですよね。見る時期を一歩間違えるとかなり凹みそうで危険な作品だと思います。
Posted by クマ at 2005年06月08日 18:01
この映画が公開されたのが2003年。イラク戦争において空爆が開始されたのもその時期でした。
監督であるイーストウッドはブッシュ大統領が所属する共和党支持ですが、相当な反戦論者でもあります。
また主役の一人、ショーン・ペンも反戦活動の急先鋒として有名です。
こういった背景からこの映画とイラク戦争を結びつける見方が多くなるのだと思います。
オイラがスゴいと思ったのは、そういった強いメッセージを前面に押し出さずに少しだけ観点をずらすと「アメリカ万歳」とも読めるような演出にしてあることです。それなりに賞レースでも実績を残してますからね。

そんなところにイーストウッドの老練な”くえない狸”を見たように思いました(笑)
Posted by かおす at 2005年06月08日 19:41
かおすさんのコメント読んで、なるほど納得です。分かりやすい解説に感謝!
しかしながら“くえない狸”という表現は言い得て妙ですね(笑)
Posted by クマ at 2005年06月09日 15:58
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